今回のコロナ禍において、患者数が減少しているクリニックも多いでしょう。
このような状況下で、独立行政法人福祉医療機構(以下、機構)から、コロナ対策として特別な融資枠が発表されています。機構自体があまり知られていませんが、かなり有利な条件で使えることは間違いありません。
コロナの影響で資金繰りが厳しいクリニックの再建に使える融資をご紹介していきます。
独立行政法人福祉医療機構とは
まず、融資の出し手である、独立行政法人福祉医療機構をご紹介します。
以下は同機構HPから一部抜粋したものです。
独立行政法人福祉医療機構は、特殊法人等改革により、社会福祉・医療事業団の事業を承継して、平成15年10月1日に福祉の増進と医療の普及向上を目的として設立された独立行政法人です。
独立行政法人福祉医療機構は、国の施策と連携し、福祉医療の基盤整備を進めるため、社会福祉施設及び医療施設の整備のための貸付事業、施設の安定経営をバックアップするための経営診断・指導事業、社会福祉を振興するための事業に対する助成事業、社会福祉施設職員などのための退職手当共済事業、障害のある方の生活の安定を図るための心身障害者扶養保険事業、福祉保健医療情報を提供する事業、年金受給者の生活支援のための資金を融資する事業及び年金資金運用基金から承継した年金住宅融資等債権の管理・回収業務など、多岐にわたる事業を展開しています。
また、これらの事業等を実施するに当っては、国から指示された中期目標に基づき、中期計画及び年度計画を主体的に定め、当計画に従って効率的かつ効果的な事業運営に努めています。また、各年度の事業実績は、第三者機関である独立行政法人評価制度委員会により厳しく評価されています。
(以上、同機構HPから一部抜粋)
国が厚生労働省を通じて福祉医療に関して政策の力点を入れるのと同時に、機構は実働部隊として福祉や医療機関を支えることを目的としています。
機構が支える領域
機構は、福祉機関と医療機関へのサポートを主な業務としています。今回は医療機関への融資に的を絞り、見ていきます。
「小回りの利く医療支援の専門機関」を標榜し、地域医療機関への「長期」「固定」「低利」の資金を安定的に供給し、設備投資資金、運転資金の貸し付けを行っています。
その金利は低く、設備投資、運転資金で通常金利は0.206~1.1%となっています。保証人不要制度を使うと、この金利に0.15%が上乗せされます。
運転資金は、通常(期間3年)・経営安定化資金(期間8年)ともに0.82%が基本金利です。
新型コロナウィルス対応支援資金融資
今回は、国の優遇政策を取り入れたメニューの一つである、無担保・無利子の「新型コロナウィルス対応支援資金の融資」をご紹介します。
①対象医療機関
新型コロナウィルス感染症により、減収・事業停止等の影響を受けた医療関係施設等
②緩和貸付の条件
1か月間の減収額が3割以上(前年同月比)となった病院及び診療所に対して、経営上必要な資金を、貸付限度額上乗せ、無担保貸付額、無利子貸付額の条件を緩和して貸し付けを行っています。
③貸付金条件
病院・診療所 | |||||
貸付金利 |
① 病院 | ② 診療所 | コロナ対応を行う医療機関 | 政策医療を担う医療機関 | |
当初5年間の無利子貸し付けの範囲 | (3割以上減収) 2億円 (3割未満減収) 1億円 |
(3割以上減収) 5,000万円 (3割未満減収) 4,000万円 |
① ②の金額と「前年同月からの減収額の2倍」のいずれか高い金額 | ① ②の金額と「前年同月からの減収額の2倍」のいずれか高い金額 | |
上記以外の部分 | 0.2%(当初5年間の上記金額を超える部分及び6年目以降の部分) | ||||
貸付金の限度額 | 次の金額と「前年同月からの減収額の12倍」のいずれか高い金額 【病院】(3割以上減収)10億円(3割未満減収)7.2億円 【診療所】(3割以上減収)5,000万円(3割未満減収)4,000万円 |
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無担保貸付 | 次の金額と「前年同月からの減収額の12倍」のいずれか高い金額 【病院】(3割以上減収)6億円(3割未満減収)3億円 【診療所】(3割以上減収)5,000万円(3割未満減収)4,000万円 コロナ対応を行う医療機関・・・上記金額と「前年同月からの減収額の6倍」のいずれか高い金額 政策医療を担う医療機関・・・上記金額と「前年同月からの減収額の3倍」のいずれか高い金額 |
上記条件で破格と思われる部分は、元金据置期間が5年間あることです。すなわちその期間は、無利息ですので、借入に関するキャッシュアウトが全くない状態が保てることとなります。
また、すでに機構から借入を行っている医療機関は、当面6か月間の元利金、事業者の状況に応じて更に3年間、したがって最大3年6か月の元利金の支払いについて、返済猶予の相談にのってくれる可能性があります。
まとめ
このように、今回の新型コロナウィルスにより、患者数の減少により経営が困難になっている病院やクリニックに対しては、特別な配慮がなされています。
新型コロナウィルス対策として、同様の日本政策金融公庫の貸付やセーフティネット4号の貸付と比較してもかなり有利な条件が提示されるかもしれません。
融資を本格的に考えている診療所などは、機構融資を中心に据えたファイナンス戦略をしっかり計画し、一時的な立て直しに大いに活用したいところです。